2012/08/07

本日の革細工:iPadトラベルケース

6月ごろから、


急な研究が入って公開できた記事は少なかったものの、個々の記事についての反響がとても大きくて驚いています。

とくに変わったことを書いたつもりはないのですが、叱咤激励のために自分の体験を交えながら書き進めたのがよかったのでしょうか。
わたしのところに出入りしているみなさんも、たまには叱られてみるものですね。

ここで例示してあることはすべて精神的にも身体的にも自分自身で探求したことばかりで、現在でも基礎修練として日々継続していることばかりなので、本当ならもっとつっこんで書きたいこともたくさんあるのですが、ただでさえ文字ばっかりだし…と、書き終えてから少し冷静になって枝葉についてはバッサリと削除してしまうことが多いのです。

しかしただ、ここで心身を整えるために挙げた事柄を、単に他人に自慢するための趣味や道楽、と一緒にしてしまわないようにだけはお願いしておきたいと思います。

たとえば問題意識さえあれば、たとえばペン習字ということのなかから、「漢字からひらがなへ」という歴史的な一般化の過程が、日本人の個々の美意識としてたしかに息づいていることがわかってくるものです。
同じようにピアノを弾くときにでも問題意識さえあれば、古代ギリシャにおいては音楽と論理とが強い関連性のあるものとして探求されていたことが実感としてよくわかるのです。

文字表現の中から論理を取り出すことすら難しいのですから、一瞬たりともとどまっていない・変化し続ける対象から論理を取り出すというのは、常日頃の問題意識なくしては、自らの技として絶対的に身につかないというほどに大事なことなのです。
(ここについては次回あたりの記事として書くつもりです)

問題意識や目的意識というのは、「何を考えながら対象に向かい合っているか」といってしまえばそれだけに見えるので、とても単純に脇に片付けてしまいがちなのですが、実のところ、これこそが人生を決定づけているとさえ言ってもおかしくないほどに、とてもとても重要なことなのです。

アルキメデスがあふれる風呂の水を見て「ヘウレーカ!(わかったぞ!)」と叫んだように、眼の前に見逃してはいけないものが飛び込んできたその一瞬に、それをしっかりと捕まえるにはどうすればよいでしょうか?
その答えは、毎日毎時間毎秒、常に考えておく、これだけです。
ただ惜しむらくは、多くの人が、倦んだり疲れたり忘れたりすることを理由に、その問題意識をいつも持続しておくだけの胆力・精神力・粘り強さ・探究心を持っていられないことです。

というわけで、例示として挙げたことについて、もっと詳しいことを聞きたいな、もっと良い方法があるよとか、ぜひとも議論したい、という方は一声かけてくださると嬉しく思います。

◆◆◆

さて、今日は久しぶりに革細工の記事にしましょうか。

お題は、友人が海外旅行に行くというので、貴重品を持ち運べるケースを作って、と言われたのがきっかけなのでした。…羨ましい。

昨今の貴重品といえば何でしょうか。パスポート、現地通貨と…


あとは、iPadです。

これだけ大きな画面で写真を見ながら乗り物のなかで同席した人といろいろ喋れれば、さぞかし楽しいだろうなあ…と思います。


わたしが旅狂いだった頃は、現地でいちいちフィルムを現像するか、デジカメが出たといってもちっちゃな画面の、すぐバッテリーの切れる機械をいじりながら、肩を寄せ合って旅先の写真を紹介するしかなかったものですから。

あれはあれで楽しかったものですが、今は恐ろしく便利です。
あとは、手荷物検査でiPadをぶん投げられないことを祈るばかり。

◆◆◆

上の写真を見るとわかってもらえますが、本体を掴みやすいように、取り出し口に切り欠きをつけました。

これがあると閉じた時も、こんなふうに使えるのです。


オーナーがイヤフォンをつけて音楽を聴くというので、イヤフォン端子にもアクセスできるだけの深さになっています。

◆◆◆

製作時に気を使ったことはといえば、
・iPadのせっかくの薄さを損なわないこと
・ガラスでできた画面をしっかり守れること、傷つけないこと
でした。

前者を考えるとき、iPadを画面をこちらに向けて挿入するかたちにすると、丸まった背面部が蓋にテンションをかけてしまうので、蓋が突っ張って閉じにくくなってしまいます。

そのため、画面を下向きにした状態で挿入するかたちにし、画面の触れる側一面にスエードを貼り付けました。
このことで色彩的な豊かさの確保と、運んでいるうちにスエードに優しく擦られて画面の指紋を拭きとってくれるようになりました。


またこのことによって側面のマチの部分も厚みを稼げたので、ポケットの容量を増やせました。
手持ちのパスポート、外国の通貨や搭乗券をいくらかつっこんでみましたが、5カ国ぶんくらいなら問題無なく入るでしょう。自分用にも欲しくなってきました…。

◆◆◆

一般のiPad用スリーブケースでは、タテ型・ヨコ型関わらず、本体をつまみ上げた側に画面が来るようになっていますが、そうするとどうしても、画面側にホックが来てしまうのです。

ですからここは、取り出してすぐに画面が見られるようにするか、万が一にも画面が傷つかないようにするか、の二者択一になるというわけです。

この選択についてわたしとしては、このケースを鞄の中に放り込んだ時、万が一にも、蓋を開閉するための金具が液晶の一点を圧迫してガラスを割ってしまわないようにしたかったものですから、やはりこのかたちがいちばん合理的だったと思います。


金具がスエードに埋もれるように配置してありますので、iPadの背面についても金具のせいで傷がつくことはないでしょう。

◆◆◆

実はこのケースのオーナーは、以前にご紹介した自転車バッグG4のオーナーさんなので、ご本人の要望で当時仕入れておいたワインレッドのスエード生地をあまさず使うことができ、バッグと合わせて世界観の統一ができたものと思います。

今年の秋くらいには出るはずの新しいiPhoneも入手されるそうで、それも合わせて「旅の一行」として考えておられるようなので、全体としてどういった世界観として発展してゆくのか、今から楽しみです。

ちなみにその一行のなかで、G4は馬車、今回のケースは執事、というところだそうな。

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